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【退職者のアカウント】止めるのと消すのは、まったく別の作業です

同じ形の利用者アイコンが横一列に並び、そのうち1つが薄くなって列から外れていくイラスト

お世話になっております!新入社員の道守みちるです!

先日、社内で共有されているスプレッドシートを開こうとしたら、権限がなくて開けませんでした。「オーナーに申請してください」と出るので、表示された名前を先輩に伝えたところ、「あー、その人、去年辞めたよ」と返ってきました。

去年。辞めた人。オーナー。

その瞬間、頭の中に一気に疑問が湧きました。

退職した人のアカウントって、いつ、どうやって片づけるのが正解なんでしょうか?

放っておくのも怖いし、勢いで消すのはもっと怖い。というわけで、公式ドキュメントとガイドラインを読みながら整理してみました。今回はその話です。ここではGoogle Workspaceを例にしますが、考え方はほかのサービスでも似ていると思います。

この記事で扱うのは、だいたいこの3つです。📝

  • 「止める」と「消す」は別の操作で、残るものも、かかるお金も違うという話
  • 消す前に運び出しておかないと、道連れになってしまうもの
  • アカウントを消しても片づかない、「その人にしか紐づいていないもの」
目次

まず用語の整理:停止・削除・(アーカイブ)🤔

管理画面には似たようなボタンが並んでいます。まずここを分けないと話が進みませんでした。

停止(一時停止)は、ログインだけを止める操作です。Googleのヘルプによれば、メール・ドキュメント・カレンダーなどのデータは削除されず、新着メールやカレンダーの招待はブロックされ、あとからいつでも復元できます。

削除は、アカウントごと消す操作です。ヘルプには、削除したユーザーを復元できるのは削除後20日以内で、データを保持したい場合は削除ではなく停止かアーカイブを選ぶように、と書かれています。

停止削除
ログインできなくなるできなくなる
本人のデータ削除されない20日を過ぎると戻せない
新着メール・予定の招待ブロックされる届かない
元に戻せるかいつでも復元できる削除から20日以内なら復元できる場合がある
料金アクティブなアカウントと同額がかかる請求が止まる(不要なアカウントは削除を、と公式は案内)
出典:Google Workspace 管理者ヘルプ「ユーザーを一時的に停止する」「組織からユーザーを削除する」の記述をもとに、みちるが整理したもの。

【最重要】いちばん見落としやすいのが、いちばん下の行です。ヘルプには「停止中のアカウントも課金の対象です」とはっきり書かれています。年間プランでもフレキシブルプランでも、アクティブなアカウントと同額。請求を止めたいなら停止ではなく削除してください、とも明記されています。

「とりあえず停止」を続けると、静かにお金が減っていきます

退職者が出たとき、いちばん安全に見えるのは「とりあえず停止しておく」です。わたしも最初はそれでいいと思っていました。データも残るし、いつでも戻せるし。

でも、そこにコストが乗り続けているとなると、話は変わってきます。「念のため」が積み上がって、使っていないアカウントの料金だけを毎月払い続ける、という状態は避けたいところです。

【Point】「とりあえず停止」は悪くありません。悪いのは、そのあと誰も見直さないことです。停止した日付と、いつまでに判断するかを、どこかに書き残しておきたいところです。

なお公式には、データを残したい場合の選択肢として「アーカイブ」も挙げられています。ただ、これが使えるエディションや料金の条件について、わたしは確認しきれていません。契約内容によって変わりそうなので、ここは断定せずに置いておきます。

消す前に運び出す:ドライブの「オーナー権限」

冒頭のスプレッドシートの話がまさにこれです。

Googleドライブのファイルには、必ず「オーナー」がいます。管理者は、退職した人が持っているファイルのオーナー権限を、別の人に移すことができます。ヘルプにも「ある従業員が離職した場合、管理者はその従業員がオーナーになっているファイルを他のユーザーに移管できます」と書かれています。

ここで、読んでいて「うわ」と思った注意点がいくつかありました。

  • ゴミ箱の中のファイルは移管されません。そして、ユーザーを削除すると、ゴミ箱に残っていた未移管のファイルも一緒に消えます。「消したつもりはなかったけど、とりあえずゴミ箱に入れていた資料」が道連れになる、ということです。
  • 外部のアカウントには移管できません。個人のGoogleアカウントや別の組織のユーザーへの直接の移管は、公式にできないと書かれています。データ保護のための制限だそうです。
  • 移管には時間がかかります。ヘルプには、移行に36時間以上かかる場合は失敗して停止する、という記述があります。大量のファイルを一気に動かすなら、退職日の当日にバタバタやるのは分が悪そうです。
  • 移管の前に、まず本人のアカウントを停止するのが公式の手順です。移管中にファイルが増えたり動いたりしないようにするため、と説明されています。

順番でいうと、停止 → 移管 → 削除。ここが逆になると、取り返しがつかない側に倒れます。

アカウントを消しても、片づかないものがあります

ここからは、管理画面のボタンでは解決しない話です。

前回書いたのですが、Google Apps Script(GAS)で作られた自動化の仕掛けは、作った人のアカウントで動き、しかも他の人の画面には表示されません。詳しくは 【GAS入門の前に】自動化を始める前に、知っておきたかった4つの上限 に書きました。

つまり、退職者のアカウントを止めた瞬間に、誰も存在を知らなかった自動処理が静かに止まる可能性があります。しかも失敗通知は、止まった本人のところに飛びます。届く先が、もう見られていないアカウントです。

似たようなものは、たぶん他にもあります。その人だけが受信していた通知メール、その人の個人名で契約していた外部サービス、その人のスマホにだけ入っていた認証アプリ。二段階認証を必須にしている場合、管理者が一人だけだと詰む、という話は 【二段階認証】全社に入れる前に、決めておきたい「締め出された人」の話 に書きました。退職の場面でも、同じ構造が出てきます。

【最重要】退職手続きで本当に難しいのは、アカウントを消すことではなく、その人に紐づいていたものを事前に洗い出すことのほうです。

公的なガイドラインは何と言っているのか

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が「組織における内部不正防止ガイドライン」というものを公開しています。公開日は2022年4月6日、第5版です。

内容は、基本方針・資産管理・技術的管理・職場環境・事後対策など10の観点、合計33項目の対策で構成されていて、付録として33項目のチェックシートも配布されています。

注目したのは、第5版の改訂の骨子として、「雇用の流動化による退職者増加がもたらすリスクを低減する人的管理の対策を追記」が挙げられていることです。退職まわりは、公的にも「今どきの論点」として扱われている、ということですね。

無償で読めますし、チェックシートはそのまま自社の点検に使えます。「何から手をつければいいか分からない」段階では、自前でリストを作るより早いかもしれません。

就業規則や誓約書のことは、わたしには判断できません

退職時のデータの扱いには、技術の話だけでなく、就業規則、秘密保持の誓約、個人情報の取り扱いといった話が絡んできます。

たとえば「退職者の受信メールを、上長が閲覧してよいのか」。技術的には設定できますが、それをやってよいかは別の問題です。この点について、わたしは法律の専門家ではありませんので、断定的なことは書けません。判断が必要な場面では、弁護士さんや社会保険労務士さんに確認していただくのが確実だと思います。

で、どういう順番にすればいいの?

ここまでを踏まえて、自分ならこの順番で組み立てます。あくまで一案です。

  • 退職日より前に、洗い出す。その人がオーナーになっているファイル、その人だけが受け取っている通知、その人が作った自動処理、その人の名前で契約しているもの
  • 退職日に、停止する。ログインを止めて、データはそのまま残す
  • 停止したあとで、移管する。ドライブのオーナー権限を引き継ぎ先へ。ゴミ箱の中身も忘れずに
  • 期限を決めて、削除する。移管が終わったことを確認してから。削除後20日という猶予があることは、頭の片隅に置いておく
  • 次の人のために、記録を残す。誰の何を、いつ、どこへ移したか

【結論】退職者のアカウント対応は、退職日にやる作業ではなく、退職日までに終わらせておく準備のほうが本体だと思います。

分からないことは、分からないと書いておきます

  • 「停止のまま何か月置いておくのが妥当か」に、一般的な正解があるのかどうか、わたしには分かりません。業種や契約によって変わりそうです。
  • アーカイブという選択肢の料金や条件は、契約内容に依存しそうで、確認しきれませんでした。ご自身の契約で確認してください。
  • Google Workspace以外のサービス(会計ソフト、勤怠、チャットなど)でも同じ考え方でいけるのかは、わたしはまだ検証できていません。
  • この記事の仕様は、わたしが確認した時点のものです。公式ドキュメントは更新されるので、実際に作業するときは必ず最新のページをご覧ください。

歯切れが悪くてすみません。ただ、「去年辞めた人がオーナーのファイル」を目の前にすると、準備の大事さだけは骨身にしみます。

参考にした資料

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