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【生成AI】社内の情報を、どこまでAIに入力していいのか

書類が半透明のフィルター板を通り抜け、一部の要素が手前に残されているイラスト

お世話になっております!新入社員の道守みちるです!

先日、会議の議事録をAIに要約してもらおうとして、コピーした文章を貼り付ける直前で指が止まりました。その議事録には、取引先の会社名と、担当の方のお名前が普通に入っていたからです。

止まったはいいものの、その先が分かりませんでした。ダメなのか、大丈夫なのか。ダメだとしたら、何がダメなのか。

社内の情報って、どこまでAIに入力していいんでしょうか?

社内で聞いても「うーん、まあ気をつけて」で終わってしまいます。気をつけたいのは山々なのですが、何にどう気をつけるのかが分からない。というわけで、公的な資料を読みにいきました。

この記事で扱うのは、この3つです。📝

  • 国の機関は、実際のところ何と言っているのか
  • 「入れてはいけない」より前に、確認すべきこと
  • 社内で先に決めておくと、毎回悩まずに済むこと

まず、誰が何と言っているのか🤔

わたしが確認できた一次情報は、大きく2つでした。どちらも無料で読めます。

① 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)

個人情報保護委員会という国の機関が出している文書です。個人情報取扱事業者(=ふつうの会社もここに入ります)向けに、2点が挙げられています。原文をそのまま引くと、こうです。

  • 生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること
  • あらかじめ本人の同意を得ることなく生成AIサービスに個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある。そのため、その生成AIサービスを提供する事業者が、当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること

プロンプトというのは、AIに打ち込む質問や指示のことです。

わたしがこれを読んで「なるほど」と思ったのは、「個人情報を入れてはいけない」とは書かれていないところでした。書かれているのは「目的の範囲内か確かめろ」と「学習に使われないか確かめろ」です。禁止ではなく、確認の要求。

② AI事業者ガイドライン(第1.1版)

総務省と経済産業省が令和7年(2025年)3月28日に公表したガイドラインです。法律ではなく、「非拘束的なソフトロー」──つまり守らないと罰せられる類のものではなく、指針です。

このガイドラインは、対象を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分けています。わたしたち、つまり業務でAIサービスを使う側は「AI利用者」にあたります。そして利用者にとって重要な事項として挙げられているのが、たとえばこのあたりです。

  • プライバシー保護:個人情報の不適切入力及びプライバシー侵害への対策
  • セキュリティ確保:セキュリティ対策の実施
  • アカウンタビリティ:提供された文書の活用及び規約の遵守
  • 公平性:入力データ又はプロンプトに含まれるバイアスへの配慮

もうひとつ、このガイドラインの根っこにある考え方が「リスクベースアプローチ」です。使う分野と使い方によってリスクの大きさが違うのだから、対策の程度もそれに合わせよう、という発想。全部禁止も、全部OKも、どちらも取らないということです。

結局いちばん大事なのは「学習に使われるか」

【最重要】チェックすべき順番は、こうだと思います。①その情報を入れる目的は本来の業務の範囲内か → ②そのサービスは入力内容を学習に使わない設定になっているか → ③契約や社内規程で持ち出しが禁じられていないか。

②が特に重要なのは、個人情報保護委員会の注意喚起が名指しでそこを挙げているからです。同じサービス名でも、無料版と法人向けプランで扱いが違うことがあります。だから「ChatGPTは大丈夫」「Geminiは危ない」といったサービス単位の話ではなく、いま自分が使っている契約プランの設定がどうなっているかが判断の軸になります。

ちなみに個人情報保護委員会は、一般の利用者向けの留意点として「入力された個人情報が機械学習に利用され、他の情報と統計的に結びついた上で、正確または不正確な内容で出力されるリスクがある」とも書いています。入力した情報は、間違った形で出てくることもある。これは、けっこう怖い指摘だと思いました。

入れようとしている情報立ち止まる理由確認したいこと
顧客の氏名・連絡先個人情報にあたる利用目的の範囲内か/学習に使われない設定か
会議の議事録人名・取引先名が紛れ込む固有名詞を伏せてから入れられないか
見積書・契約書相手先との約束がある契約に守秘の条項がないか
設計書・プログラム会社の資産にあたる社内規程で持ち出し扱いにならないか
すでに公開している資料相対的にリスクは低いそれでも利用規約は一度読む
※ みちるが記事執筆時点の理解で整理したものです。最終的な判断は、必ず自社の規程と、法務や専門家の確認によってください。

「あとで消せる」と思わないほうがいい

【Point】いったん外に出した情報は、自分の手では回収できません。

この感覚は、パスワードの話とよく似ています。パスワード管理の記事にも書きましたが、漏れてから対処するのは、漏れる前に決めておくより何倍も大変です。AIへの入力も同じで、送信ボタンを押した瞬間に、判断のやり直しはできなくなります。

だから、迷ったときの正解は「調べてから入れる」です。急ぎの仕事で調べる時間がないなら、その日は固有名詞を消して入れる。それだけでも、だいぶ違います。

社内で先に決めておくと、毎回悩まなくて済むこと

毎回ゼロから考えるのは無理があります。わたしが「これは決めておいたほうがよさそう」と思ったのは、この4つです。

  • 使っていいサービスを、名前とプランで決める。「生成AIは各自の判断で」がいちばん危ないです。
  • 入れてはいけないものを、具体名で3つだけ書く。10個書くと誰も覚えません。「顧客の氏名」「マイナンバー」「未公表の契約内容」くらいの粒度で。
  • 迷ったときの相談先を1人決める。「情シスに聞いて」ではなく、名前で。
  • 使った結果を人が確認することを前提にする。AI事業者ガイドラインも、AIに単独で判断させず、適切なタイミングで人間の判断を介在させることに触れています。

なお、わたしは法律の専門家ではありません。ここに書いたのは公表資料を読んだ範囲の整理であって、個別の判断の代わりにはなりません。実際の運用は、必ず自社の規程と専門家の確認のもとで決めてください。

で、正直なところ

【結論】「どこまで入れていいか」に、全社共通の正解はありません。あるのは「自社で線を引いたかどうか」だけです。

調べる前のわたしは、どこかに「これはOK、これはNG」の一覧表があると思っていました。ありませんでした。あったのは、確認すべき観点と、考え方の枠組みでした。

最初は不親切だと思ったのですが、途中で納得しました。同じ「顧客の名前」でも、会社によって、契約によって、使うサービスの設定によって、答えが変わってしまうからです。一覧表を作れるのは、国ではなく、それぞれの会社のほうです。

とはいえ、線を引く作業をする余力が中小企業にどれだけあるのか、というのは別の話で、わたしにはまだよく分かりません。「まず禁止」にしてしまう会社の気持ちも分かります。ただ、以前の記事にも書いたとおり、AIを使わない選択にもコストはあります。

わたし自身も、まだ毎回ちょっと迷いながら使っています。迷わなくなったら、それはそれで危ない気もしています。

参考にした資料

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