お世話になっております!新入社員の道守みちるです!
資料の中に「保守費」という行を見つけて、一瞬、失礼なことを思いました。今月、特に何も相談してないけど……この金額は何だろう?と。
口に出さなくて本当によかった。調べてみたら、わたしの理解が丁度ひっくり返る種類の話でした。
保守契約で、わたしたちは何にお金を払っているんでしょうか。
この記事で扱うのは、だいたいこの3つです。📝
- 保守費の相場について、わたしが書けないこと
- 「何も起きていない月」にも払う理由を、どう考えればいいのか
- 契約の中で、どこを見ておくとあとで困らなさそうか
先に正直に。相場は、わたしには分かりません🤔
調べていると「保守費は開発費の何パーセントが目安」といった数字を見かけます。でも、その根拠となる一次情報には、わたしはたどり着けませんでした。
なので、この記事に金額の目安は書きません。会社の規模も、システムの中身も、求めている安心のレベルも違いすぎて、ひとつの数字で言えるものではなさそうです。
【Point】金額が高いか安いかを判断する前に、「何が含まれているのか」を揃える。これなら、数字を知らなくてもできます。
保守は、開発とは別の話として扱われていました
IPA(情報処理推進機構)が公開している「情報システム・モデル取引・契約書」というものがあります。ページには、情報システム開発におけるユーザ企業とITベンダ間の取引構造を透明化するため、それぞれが各開発段階で担うべき責務等の解説と、契約書のひな型を提供していると書かれています。
ここで大事なのは、段階ごとに契約を分けて考えるという発想が、もともとあるということでした。作るときと、作ったあとは、別の話になりうる。だから保守費は、開発費のおまけでも、付け足しでもないということです。
なお、このモデル契約書の第二版は、民法改正を踏まえた見直しを含む検討を経て公開されたものです。ただし、わたしは法律の専門家ではありません。契約の中身について判断が必要なときは、専門家に相談してください。ここでは「こういう資料が公開されているらしい」という紹介に留めます。
「動き続ける」の代金だと思うと、腑に落ちました
もうひとつ、IPAのアーカイブに「非機能要求グレード」という資料がありました。
説明によると、これは「非機能要求」についてのユーザと開発者との認識の行き違いを防止することを目的に、項目を網羅的にリストアップして分類し、それぞれの要求レベルを段階的に示したものだそうです。項目は6つの大項目に分けられています。
「非機能要求」を日本語で言い直すと、「画面には見えないけれど、ないと困ること」です。何時から何時まで動いているのか、止まったときにどれくらいで戻るのか、といった話ですね。
これを読んで、わたしはこう思いました。保守費は「作業した量の代金」ではなく、「このレベルを保ち続けてもらう代金」なのではないかと。何も起きなかった月は、むしろレベルが保てていた月です。
……と書くときれいにまとまりすぎですが、これはわたしの解釈です。実際の契約で何に対していくら支払うのかは、その契約書に書いてあることがすべてです。
| 確かめたいこと | 決まっていないと、あとでもめそうなこと |
|---|---|
| 対応する時間帯と曜日 | 土日に止まっても、連絡先がない |
| 連絡してからの反応の目安 | 「対応中です」のまま何日も過ぎる |
| 含まれる作業と、別途費用の作業 | 保守の範囲だと思っていたことが追加請求になる |
| バックアップと復旧の扱い | 取っていると思っていたのに、誰も取っていない |
| 契約を終了するときの手順 | やめたいのに、やめ方が分からない |
SLA、SLO という言葉が出てきたら
デジタル庁のガイドブックに、この2つの説明がありました。APIの話として書かれていましたが、考え方は保守でも同じだと思います。
- SLA:利用者との間で、サービスの品質に関する合意を明文化したもの。可用性、レスポンスタイム、サポート対応時間などの項目を含める
- SLO:SLAを達成するための内部的な目標。SLAより厳しい基準を設定する
なるほどと思ったのは、外に約束する数字よりも、中で目指す数字のほうを厳しくしておくという発想です。余白を先に用意しておく、ということなんだろうと思います。
安い保守が悪いわけではない、と思います
安いということは、たぶん範囲が狭いということです。そして、範囲が狭くても困らない会社はあります。
問題なのは、範囲が違うものを、金額だけで並べてしまうことのほうでした。この話は相見積もりの記事と同じ構造ですし、見積書の読み方としてはこちらの記事でも触れました。
【最重要】安いか高いかを見る前に、上の表の項目が、契約書のどこに、どう書いてあるかを見る。
結局、何に払っているのか
【結論】契約によって違います。だからこそ、自分の契約の中身を見にいくしかない、というのが今の結論です。
歯切れが悪いのは承知です。でも、海のものと山のものを同じなのではと言うのは、やっぱり違います。保守という言葉の中身は、こちらが思っている以上に幅がありそうです。
ただひとつだけ、今の時点で思っていることがあります。保守を安くすること自体は、できると思います。ただ、安くした分だけ、自分たちで抱えることになる。その分を抱えられる体制があるかどうかで、同じ金額の意味が変わるということなんだろうなと。
これも、今のわたしが思っているというだけの話です。
参考にした資料
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書」https://www.ipa.go.jp/digital/model/index.html
- IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html
- IPA「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)紹介ページ」https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ent03-b.html
- デジタル庁「APIテクニカルガイドブック」(SLAとSLOの設定)https://www.digital.go.jp/policies/data_strategy_government_interoperability_framework

