お世話になっております!新入社員の道守みちるです!
先月、経費の精算をするのに、申請用紙を印刷して、手書きで記入して、領収書をのりで台紙に貼って、上長の席まで持っていって、不在だったので付箋を貼って置いてきました。3日後、「日付の書き方が違う」と戻ってきました。書き直して、また持っていきました。
この一連の流れのうち、本当に必要だった作業はどれでしょうか。
「紙をやめたい」という話は、実は「紙代を減らしたい」という話ではありません。今回扱うのは3つです📄
- 紙の申請書の、本当のコストはどこにあるのか
- 電子化には「やってもいい」部分と「やらなければならない」部分がある
- 何から手をつけるのが現実的か
先にお断りしておきます。わたしは法律の専門家ではありません。以下は国税庁が公開している資料を読んで整理したものです。自社の判断は、必ず税理士など専門家に確認してください。
コストは紙ではなく「待ち時間」と「差し戻し」
冒頭の話を分解すると、時間を食っていたのは印刷でも記入でもありません。上長が席にいなかった3日間と、書き方が違って差し戻された往復です。
紙をPDFに置き換えるだけでは、この2つはほとんど解決しません。メールでPDFを送っても、上長が見るまでの待ち時間は変わらないからです。
【Point】脱・紙の本体は「紙をデータにすること」ではなく、「申請の状態が誰からも見えること」と「間違った書き方が最初からできないこと」です。
入力フォームなら、日付欄は日付しか入りません。必須項目を空欄のまま送信することもできません。差し戻しの理由のかなりの部分が、入り口で消えます。
ここで法律の話が混ざってくる
「じゃあ全部データにしよう」と考えたとき、必ず出てくるのが電子帳簿保存法です。そして、ここで多くの人(わたしを含む)が混乱します。
国税庁の資料を読むと、この法律は3つの別々の制度を扱っています。混乱の原因は、この3つが同じ名前で語られていることでした。
| 制度 | 対象 | 性質 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 自分が最初からパソコンで作成した帳簿・書類 | 電子のまま保存に代えることが「できる」 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った・作成した国税関係書類 | スキャンした記録の保存に代えることが「できる」 |
| 電子取引のデータ保存 | 電子でやりとりした取引情報 | 電磁的記録を保存し「なければならない」 |
【最重要】上2つは任意、一番下は義務です。ここが決定的に違います。「電子帳簿保存法に対応しなきゃ」と焦っている場合、まず確認すべきなのは3つめだけかもしれません。
「電子取引」の範囲が、思ったより広い
では義務のほうの「電子取引」とは何か。国税庁の説明では、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などに通常記載される事項を、電子的な方式でやりとりする取引を指します。具体例として挙げられているのは、次のようなものです。
- EDI取引
- インターネットによる取引
- 電子メールで取引情報をやりとりする取引(添付ファイルによる場合を含む)
- インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じてやりとりする取引
3つめに注目してください。メールにPDFの請求書が添付されて届いた——これも電子取引です。「うちはEDIなんてやっていない」と思っていても、該当している可能性は高いということになります。
社内の申請書と、法律の交差点
ここでようやく、冒頭の申請書に話が戻ります。
稟議書、休暇届、備品購入の申請書。これらは社内の意思決定の記録であって、多くの場合、税法上の保存義務の直接の対象ではありません。だから電子化の自由度は高いはずです。
ところが経費精算だけは事情が違います。申請書そのものは社内文書でも、そこに添付される領収書が問題になる。Webサイトからダウンロードした領収書や、メールで届いた領収書は、電子取引のデータ保存の対象です。
つまり「申請フローの電子化」と「証憑の保存」は、別のレイヤーの話です。ここを一緒くたにすると、話が進まなくなります。要件定義の話で書いたのと同じで、まず何と何が別の問題なのかを分けることが先です。
何から始めるか
いきなり全社の申請書を置き換える必要はありません。順番としては、こうなると思っています。
- まず、義務の側を確認する。メールやWebで受け取っている請求書・領収書が、いまどこに保存されているか
- 次に、一番差し戻しの多い申請書を1つ選ぶ。全部ではなく1つです
- それを入力フォームにする。Googleフォームで受付する話で書いたやり方で、まず動くものを作る
- 回してみて、承認の履歴が足りないと分かってから、専用のワークフロー製品を検討する
正直に言うと、分からないこと
電子取引のデータ保存には、保存の仕方についての要件があります。国税庁は「一問一答(Q&A)」という長い資料を公開していて、令和8年7月版が最新です。わたしはこれを最後まで読み切れていません。
また、自社が具体的にどの要件を満たす必要があるのかは、事業の規模や取引の形によって変わります。これはわたしには判断できません。会計ソフトの機能で足りるのか、専用の保存システムが要るのか——ここは税理士に聞くのが一番早いと思います。
【結論】脱・紙は、紙をなくす話ではありません。待ち時間と差し戻しをなくす話です。そして法律の話とは、経費精算の領収書のところで交差します。この2つを分けて考えると、手をつける順番が見えてきます。
——ちなみにわたしの経費精算は、いまも紙です。フォームにしましょうと提案する勇気が、まだ出ていません。
参考にした資料
- 国税庁「電子帳簿保存法の概要」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm
- 国税庁「電子帳簿保存法関係」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm

